詩 ポエム 待ちわびて ~赤の物語~
イライラするリーダー
待ちわびる二人
全員揃わないと
出発できないよ
なかなか到着しない仲間
バスが遅れているのよ
何か事故でもあったんじゃないか
みんな心配
リーダーはやきもき
先に来た二人
お待たせしてすみません
ずいぶん早く来てもらったのに
そうこうするうち、ジャックが到着
遅かったね
間に合わないかと思って
ハートがドキドキしたよ
リーダーは小言を言う
キングとクイーンはお待ちだったよ
こんなに待たせて
失礼じゃないか
すみません、と謝るジャック
まだ連れが
どこかで迷っているんだ
探してきましょう
君はここにいなくちゃだめだ
下手に動くと勝負がついてしまうよ
次のバスをまとう
さあ、配られた
やっと到着
テン、のカード
これで全員そろったね
リーダーのエースは胸をなでおろし
僕たちが一番早かった
ダイヤやスペードやクラブより
それでは出発だ
全部ハートがいただこう
ロイヤルストレートフラッシュ
勝負あり!
詩 ポエム 赤い髪の少女 ~赤の物語~
少女は思う
サンザシの花を髪に飾り
花の香りにうとうとしながら
もう春がやってきたのね
昨日シロツメクサの小道で出会った
黄金色をした少年
春の精だったのかしら
籠いっぱいのサンザシをもらった
小川の流れをすくってみれば
冷たい手も ほんのり暖かく
つゆになって消えた
空っぽの手
モンシロチョウがやってき
少年に何かをささやく
夏を迎えに行かなくちゃ
カゲロウの中に消えていった
野ばらのつぼみはまだ堅く
小道がバラで溢れるのは
もう少し先のよう
無事に夏に会えるといいわね
緑の屋根の家に住む
赤い髪をした少女
春のベールに包まれて
うとうと春の夢の中
詩 ポエム 赤の物語 ~赤い靴を履いていた女の子~
赤い靴を履いていた
おじさんに連れられてこの街へやってきた
赤く燃えるような髪をして
赤いスカートに白いエプロンをしているとき
可愛かった
空が楓で赤く染まる季節にも
空が夕焼けで赤く染まった時にも
女の子の赤い髪は
負けずに赤く輝いていた
誰よりも赤く
ハロウィンのパーティーで
水に浮かんだリンゴ
一生懸命にとろうとして
みんな水浸しなのに
一人笑ってリンゴをかじる、赤の女の子
冬の寒い日
暖炉に燃える真っ赤な炎
炎にあぶられて
僕も女の子のほほも
真っ赤にほてる
雪が溶けて
生命の息吹が戻る頃
女の子はいなくなってしまった
ある日突然 大きな船に乗って
おじさんと一緒に
女の子の赤い靴だけが
暖炉のそばに残されて
詩 ポエム 赤の物語 ~クリスマス~
暖かい国で生まれて
寒さも雪も嫌いだったのに
寒い季節で人気者になった
押しも押されぬ大スター
ライバルはシクラメンか
今でも寒さは苦手なのに
顔を見せれば人が集まる
着ているスーツの色のせいか
サンタクロースとおそろいで
寒い冬によく似合う
今日も美しい奥さんが
僕を抱いて家路を急ぐ
暖かいリビングが
これから僕の住まう場所
もみの木も一緒かな
静まり返った部屋の中で
驚いて目を覚ます
窓の外にはトナカイが
僕のそばには僕と同じの
赤いスーツに赤い帽子のおじさんが
スリリングな一夜が終わり
子供たちの歓声が響く朝
七面鳥が運ばれ
暖炉では炎が踊り
もみの木の下はプレゼントで溢れる
寒さも雪も嫌いだったはずなのに
毎年目にするこの光景
この幸せな瞬間に
一緒にいられてうれしいんだ
嫌いじゃないんだ こんな日が
詩 ポエム ナンセンスお茶会
テーブルにスコーン
ティーポットに
華やかなカップ
ダークブラウンのお茶が注がれ
ミルクは先だったかしら?
それとも、後に?
お茶がいつまでもホットなように
ポットを包みましょう
優しく でも、しっかりと
お客様が見えたようです
お客様は4人
3人はおしゃべりに夢中
仕方なく スコーンをほおばる少女
ハリネズミの頭はポットの中に
なんの話をしているのかしら?
ピーターという名のいたずらっ子
先日お茶会をひっかきまわして
帽子の男を怒らせた Mad Hatter
ポッターおばさんに
きつく叱ってもらったのよ
まだいたずらなら
うちのご主人様に任せなさい
驚く少女
ポット夫人はさらに続ける
どうぞお城にいらっしゃい
素敵なお茶を御馳走しますよ
城主はこわもてBeast だけれど
人に会わなきゃいけないの
もう行かないと遅れてしまう
女王様は怒りっぽいのよ
真っ赤なハートを持っているのに
少女は席を立ち
白うさぎの後を追う
お茶会はつづく 果てることなく
少女を見送るポット夫人
無事におうちに帰りなさいよ
詩 ポエム 風に誘われて
振り向くと
見つめる少女
目と目が会い
少女が手を振る
冷たい空気に触れて
顔が赤くなる
風に吹かれて
押し戻される
ちょっといいとこ見せようと
くるっと 前転
ひょいっと バック転
雀の歓声
木の枝の拍手
黄色い海だ
春の香りがする
一面に菜の花
忙しそうなミツバチに
挨拶
きれいなお嬢さんが近づく
緊張 心臓がドキドキ
青いカクテルドレスが眩しい
つんと涼しいまなざし
アゲハ蝶
ずいぶん寄り道して
風のせい
こちらもいい
あちらもおもしろい
と、誘惑ばかり
そろそろ到着
着陸の準備はできたか
ラジャー と威勢よく
紙飛行機は応答
ふわっと 芝生の上に
緑のランディング